それでも僕らは砕けない 〜ウディネーゼ対ミラン〜

 ミランは怪我人と出場停止の選手が大量発生し、ベストメンバーが組めてない。ちょっともうめちゃくちゃである。ウディネーゼは冬の補強に大成功を収め、シーズン後半に向かっている。この2チームは暫定の順位でCL圏内にいる上位対決。スクデットのためには絶対に負けられない。

 ■基本形はユーベといっしょ

 この試合、ウディネーゼは中盤で数的同数を作ること、後方で数的優位を作ること、サイドで数的不利を作らせないことで守備を行った。その守備の形はリトリートする場合にも、前から攻撃的な守備を仕掛ける場合にも、基本的にこの考え方は変わらなかった。これはミラン戦とウディネーゼ戦のユーベと同じである。

 最初にその基本形を見ていく。だいたいはこんな感じである。

 ここでウディネーゼは3バックで守る恩恵を受けることになる。ロビーニョとシャーラウィはサイドに開いたり、中盤に降りていく0トップ的な動きをする。それに対してウディネーゼは3バックなので、もともと3対2の状況。ゴール前から人が居なくならないことと、マンマークで2トップについていくことの両立が可能になる。

 で、中盤とサイドでは数的同数。もしロビーニョやシャーラウィが登場してきてもドミッツィやベナティア、ダニーロの3バックのマンマークにより数的同数を保つことに成功していた。なのでミランは数的優位を手に入れてるところから攻撃の活路を見出す必要がある。

 ■攻撃的な守備から試合に入ったウディネーゼ、対するミラン

 そして、ミランは後方では数的優位を形成することになっている。で、ウディネーゼがイスラとディナターレをスイッチに前プレに来た場合では、この数的優位を利用してボールを運べれば面白そうである。で、ウディネーゼは前からの攻撃的な守備を仕掛けてきたので、そいう状況もありそう。

 後方にブロックを作られた場合では人に付くことに加え、スペースを埋める意識が高まる、てか、ここでは後方の数的優位は意味がない。でも、相手が前プレに来れば、それによって生まれるスペースがある。なので後方の数的優位を利用し前プレをかわせば、そこを利用して攻撃を仕掛けることができる。

 実際にウディネーゼの前プレから、生まれるスペースを利用しようとしたのを上げると、稀に異常に広くなるイスラの守備範囲。その広さから生まれる隙をついてはボールを運ぼうとするもの。他には前半10分くらいまで見られた形ではアンブロジーニをサイドに流す→シウバとアンブロジーニのところのミスマッチ、アンブロジーニとメスバのところのミスマッチを利用してボールを運ぶもの。

 ただ、ウディネーゼミランの後方へのファーストプレスをかわされること自体は気に病んでいないようで、出どころを防ぐより、その先は数的優位なんだからそこを止める意識で守備をしていた。でも、広い範囲を走るイスラのミランの後方への寄せは地味に効いていた。ディナターレもそれなりに頑張っていた。アンブロジーニのところも時間とスペースをメスバに提供できない。なのでその形は時間の経過と共に消えた。

 後方の数的優位を利用して享受できてないで、ミランは前プレに苦戦してるような時間が多くなる。攻撃の形が作れないので困ったもんである。さらに中央を完全に割られて先制を許す。ただ、ウディネーゼの守備の設計的の事情によりボールを運べたような状況になることもあった。

 '''■スタミナとメリハリ、ディナターレメクセスという要因'''

 攻撃的な守備、つまり前プレを継続するのは運動量的に辛いものがある。この場合では前プレのスイッチであり、広い範囲を守るイスラ、ミランの中盤に1対1でどこまでも付いていく中盤の運動量。なのでウディネーゼはイスラとディナターレのところをスイッチにする前プレと、後方に引いて待ち構える形を併用する。先制してからはその使い分けが頻繁に見られた。

 ウディネーゼはリトリートした際の守備も、ほぼ基本形の通りで、サイドと中盤では数的同数を保ち、3バックは数的優位の利点を活かして2トップに対応する。ただ、リトリートした場合はミランの選手がいるゾーンに合わせて、マッチアップを変更することなども行なっていた。

 中央では数的優位が形成されている。で、ミランは中盤のセードルフエマヌエルソンノチェリーノ、シャーラウィとロビーニョとの2トップが、ブロックの外に出てボールホルダーとなることが多かった。といってもウディネーゼは人数が足りてるのでボールホルダーに寄せることが中盤と3バックのところで出来ていた。

 なのでボールホルダーに寄せて時間を奪うこと、そして出てきたところ、つまりブロックの中で数的優位を保ちインターセプトを狙う。また数的優位なのでカバーリングも存在する。なのでほぼ完璧に守備を成功させていた。稀にボールホルダーへの寄せから、そのままボールを奪ってしまうこともあった。

 ただ、アンブロジーニメクセスやシウバ神が攻撃参加してくると色々と厄介になる。で、アンブロジーニが攻撃に絡んでいく様子ならイスラが戻って対応していた。でも、シウバとメクセスが勇気を持ってドリブルで攻撃参加した場合は、誰が寄せるのかがぼやけていた。

 でもあまり勇気を持てなかったので、攻撃参加の頻度は少なかった。その原因はやはりウディネーゼのカウンターにある。数的優位のブロックの中でインターセプトしたら、ディナターレにボールを届け、ディナターレメクセスのマッチアップを即座に成立させ、そこからの攻略を試みる。フルボッコにされるメクセス

 しかもディナターレだけじゃなく、インターセプトに成功した選手やイスラも攻撃に絡んでくる。なのでカウンターの驚異を考えればシウバもメクセスもあまり上がりたくない。そんな駆け引きがあったのかなと。グイドリンは守備の隙にうまく砂をまぶしたというところか。

 そしてウディネーゼの2つの表情を見せる守備にずっと無く苦しむミラン。そうやって完全にウディネーゼは攻撃的な守備と、リトリートを使い分けることも実行し守備により試合の流れを自らのものとた。さらにカウンターでミランのゴールに迫り前半を進める。そして先制にも成功した前半は終了した。ミランは似たような守備に苦戦したユベントス戦の反省はしていたのだろうか。

 ■アッレグリの魔術?と、アメーリアたちの活躍

 完璧に守られている状況を打開する采配をやってくるのかと、後半から期待されたアッレグリだが、何もやってこない。ウディネーゼは前半よりリトリートする意識を高めて前からの守備とリトリートを行う。で、数的優位を保つブロックにボールをインターセプトされ、ウディネーゼのカウンターにさらされまくるミラン。もう1点が入るかもしれない、まさに万事休すかといったところ。

 好き勝手にやるウディネーゼ。しかしミランは耐える。そのカウンターをアメーリアのファインセーブという今まで見たことない手段でしのいでいく。まさに目覚めたアメーリアである。さらにシウバ神という要因。中盤で潰しまくったアンブロジーニ、必死のアバーテの守備などで、必死にしのぐ。とにかくカウンターでさらされてもしのぐ。ほとんど気合いだけで守っていた。

 そうこうしているうちにウディネーゼのスタミナ切れが始まる。カウンターでの上下動に加え、前半の攻撃的な守備のつけといったところか。ここでミランノチェリーノに代えてマキシロペスを投入する。まさかここまでがアッレグリのプランだったとは誰も知らない。もしかしたらそうだったんじゃないのかと。

 '''■マキシロペスと、イタリアの未来・エルシャーラウィの輝き。ついでにエマの目覚め'''

 ウディネーゼは疲れにより、ボールホルダーへの寄せが甘くなり始め、攻撃的な守備もほとんど機能しなくなってきた。それに加えて狭いところでボールを引き出し、ボールキープで時間を作るマキシロペスという要因。よってミランはこの試合始めて流れを徐々に掴むことに成功した。

 で、マキシロペスとシャーラウィの活躍により同点に追いつくことに成功した。コーナーキックからの流れからのカウンターでエマヌエルソンがボールを運ぶ。シャーラウィへ。シュート性のクロスがハンダの神のもとへ。こぼす神様。詰めたマキシロペス。まさかの同点かよミラン

 その後、ロビーニョがなんだかんだで得た決定機を外す。ここでヒーローになれない先輩。それに代わってイタリアの未来。スティファン・エル・シャーラウィ。通称ファラオが試合を決める。エマヌエルソン、いつからこんなに上手くなったのかと疑問を与える裏への巧いパスがスタート。カウンターの形である。

 裏に走り込んでいたマキシロペスへエマヌエルソンのパスが通る。中央で待つのはシャーラウィの逆転弾。ロビーニョなら外しただろう決定機を沈める。ロビーニョ→ボネーラ。わかりやすいメッセージを送信したアッレグリ。システムを4−3−1−2から4−4−2に変更する。アバーテを右SHへ、ボネーラを右SBへ変更。そうして気合で守り倒したミラン

 ■最後に、この感動についてなんなりと

 いやー、泣いた。こんなに感動した試合は久々。ミランは砕けない。うん、スクデットはまだユベントスと争える。ただ、内容は酷かった。ユーベ戦から進化していない攻撃が特に。ウディネーゼからすれば残念な試合だったなと。ミランに流れを渡したといえ、2つのゴールは運が悪かった。

 マキシロペスとシャーラウィと。マキシロペス。この試合でミラニスタのハートを掴んだはず。勝負強いミランが帰ってきたかもしれない。一部ではバッジョの後継者と言われる天才はまだ19歳。ミランの未来であり、イタリアの未来である。CLでの世界デビューも期待しとく。