〜過信と自信〜 ミラノダービー



 スタメンを眺めてみるとインテルは予想通りのスタメン。ミランは、、、エマヌエルソンがトップ下でスタメン。。。。。いや頑張ってくれてましたけど、ロビーニョをスタメンにしなかった理由を知りたい。ジョーカーが居なくなってしまうじゃんというわがままなのか。

 エマヌエルソンがスタメンでも、ミラノダービーミラノダービーである。サンシーロのピッチは発煙筒がたかれて興奮状態。日本のミラニスタインテリスタも負けられないと願って応援しているだろう。もちろん日本のナガテエッレスタたちも注目である。

■ハイプレス&ボール保持

この試合、引いたミランインテルが崩せるわけねーってのが予想であった。だってインテルアルバレスを中心とするポゼッションでここまで戦ってきた。さらにミランは発熱の影響でセードルフがベンチ、アクィラーニが怪我人リストに名を連ねたことでポゼッションに適した選手が居ないよねってこともある。

なのでインサイドハーフのコンビはボアテンクとノチェリーノ。カウンターで爆発しそうなメンツである。ということで引いてカウンターだなってことで引きこもるミラン、攻めあぐれるインテルという構図で試合はスタートした、ってなるはずだったんだけど、ミランは前からプレスに行くわ、後ろから攻撃を組み立てて行くわと、引いてカウンター狙いのミランって予想を覆すには充分であった。

まさかのハイプレスとボール保持という手段でインテルに襲い掛かってきたミラン。そのハイプレスがバッチリ填まったのが憎い。ボールを奪われてからの素早い前線のプレッシングに、ファンボメルを中心とする後方の連動性といったらほぼ完璧でインテルにボールを運ばせない。そうして、ミランインテルにボールを持たせず、自分たちでボールを支配し、試合を支配した。

ミランの武器ってなんだろうと考えた時に、思い付くのは手にしつつある戦術選択の幅。ハイプレスもできるし、引いて守れるし、ポゼッションできるし、カウンターもできる。そして、これらを高いレベルでやることができる。そこから最近のインテルを振り返ると、引いてカウンターが最善の策だよねってなっていた。





引いて守る利点として2ラインの間のスペースが開きにくいというものがある。ハイプレスはそのスペースが開いてしまう可能性のリスクがある。で、インテルはこのスペースが開いたときに良い攻撃を仕掛けます、という特徴があった。逆に言えばこのスペースがないとボール持つけど崩せない、引いた相手を崩すのが苦手。これまでは相手のミスに助けられていた。

インテルが相手の守備を自分たちで崩せる可能性あるハイプレス。だけどボールを運ばせなきゃそもそも2ラインの間のスペースなんて使われないよねって話になったらしい。そのハイプレスでボールを運ばせず、インテルの良さを消したミラン。同時にインテルにボール保持をさせないことにも成功した。

つまりハイプレスで、ボールを運ばせないし、アルバレス中心のポゼッションもさせないよと正面衝突ちっくな手段でインテルの攻撃を妨害した。インテルはトリクアティス型442によるポゼッションでゲームを支配することも、相手のハイプレスをなんとか掻い潜っての仕掛けも封じられた。

 といっても、ボールを中途半端に奪われて危ないかもというシーンはよくあった。居るべき場所を越えるファンボメルがクラッシュしまくったのでごまかされてたのが印象的。または後方のネスタやチアゴシウバが潰す。やはり、リスクはかなり伴っているハイプレス。

■ボールを持ったぜよ、、、でも得したのか損したのかわからんね

とにもかくにもハイプレスで、インテルにボールを保持させず、ボール保持に成功したミラン。で、インテルは途中でボール保持を諦めて守備意識を高めた。そのインテルの優秀なところは中央を閉じる意識であった。ミリートとパッツイーニが守備に奔走する姿は、前線が守備をしないよねって言われ続けたインテルが変わったのかもしれない。





 パッツィーニミリートの役割は中央からボールを運ばせないこと。これが全てであった。ミランの攻撃はサイドに誘導される。これがインテルへの驚き。パッツイーニとミリートが守備をやっている!ってのが驚き。ミリートとパッツイーニはファンボメルにどちらかがマークにつくことでファンボメルをボールに絡ませないようにもする。彼らによって中央を閉じられたのはミランにとって痛い出来事であった。

 ならサイドから崩していって中央で勝負してみようってミラン。だけど大苦戦する。左サイドから崩そうにもサネッティマイコンインテルの右サイドコンビが無双していて厳しい。右サイドでも長友と守備意識を高めたアルバレスの粘りの守備で簡単じゃない状況。だったらって、そこからイブラへの単調なロングボールが多かったのには違和感を覚った。昔の悪いくせじゃないかと。

 バイタルでレシーブ能力を発揮しようとするパト。4−4で完全に埋められてしまったスペースの中では無理がある。さらにイブラがゾーンの外でボールを受ける数がなぜか少ないので効果的な楔のパスを入れる人がいない。どうしましょうか。ボール保持に挑んだけど崩せないで嘆いてそうなアッレグリ

 また、単調な攻撃の繰り返しっても感じた。アクィラーニセードルフが居たらもっと時間を作って相手を揺さぶって、、とかできそう。でも居ないので仕方ない。そんなことができそうなイブラはなぜかいつもと違い幅広く動かない。だったらボール持つなよって話だけど、持ってしまったもんは仕方ない。

 だけど隙を作ってみてるのかなってシーンがあった。狙いとしてはカウンターのカウンター。インテルにボールを運ばれてカウンターを喰らったシーンでは少ない人数で守る。といっても前線はサイドチェンジはされないようにしている。少ない人数で、、そんな隙につけ込めば、インテルにも隙ができるかもっての狙いがあったのかは知らない。

 とりあえず攻撃的な姿勢を見せてきたミラン。ボール保持できなかったので守備的に振る舞うインテルミランはハイプレスで完全に試合を支配してる状況。でも崩せない。インテルミランのハイプレスにより試合を支配されちゃった様子。でも守れてる。そんな状態で試合は進み、前半も終わる。

 で、後半始まって間もない時間帯にインテルが先制する。サネッティのゴリブルが見事に発動した。それによって2人かわし一気にプレスを回避するサネッティミリートへパス。アバーテがミスっぽいことをやらかす→ミリートへ渡って巧いシュートでアッビ神の要塞を破ることに成功した。

 ■ファンボメルの誘惑

 後半のミランはさらに急ぎすぎというシーンが増えてきた。やっぱり時間を作れる選手の不在が痛い。なんて言うか荒々しい攻撃。ピッチ上の指揮官セードルフがベンチにいるなら後半から出せば良いのにって言いたくなった。その中でもちょっと気になったのはファンボメルのポジショニングであった。





 そこで単調な攻撃を変えようと立ち上がったのはファンボメル。彼はミリートかパッツイーニがついてくることがわかったので動く。最初に左右にズレることを考える。右にズレることでチアゴシウバに上がるスペースを作ろうとした。逆にネスタにスペースを与えるために左にズレることもあった。

次にポジショニングを高くしてみた。これが結果的にパッツイーニとミリートが守備をやりづらくすることにつながると考えたらしい。ファンボメルネスタとチアゴシウバ距離を取ることで、2トップの守備の範囲を広げる。守備は狭くが法則。だけど攻撃を広くすれば守備は広くなるって考えか。





 インテルを4−4−0−2にすることを狙う。簡単にすると、守備の幅を広くさせて2トップを守備の絡みから消し去ろうとした。4−4に対して攻撃したかったのだろう。だけど優秀だったミリートとパッツイーニ。自分の埋めるところ、自分の守るべきところはハッキリしてるようで惑わされない。もし人数が足りなければ引いて来てまで4−4ブロックの前方を埋めてくる。中央が閉じられたままのミランは、ずっと困ったまま。

 そこで謎交代が連続発動する。ザンブロッタからロビーニョ。全く計算できないエマヌエルソンサイドバック。どこかで見たけど、ずっと見てない。さらにラニエリアルバレスからキブ。よくわからない交代。長友を一列上げる。ああ見えてキブは空中戦は得意じゃない。

 さらにミランも10番のセードルフ先生を投入。インテルミリートからスナイデルを投入する。よってシステムを4−4−1−1に変更。システム変更で後方と前線を繋ぎ易くし、スナイデルの能力によってカウンターの精度を高める狙いのよう。もう1点欲しいとか強気じゃないかラニエリさん。

 でも、気持ちはスナイデルの守備に現れる。4−4の前を埋める意識はミリートほど高くない様子。中央が甘くなった。よって終盤に掛けてインテルの守備を崩せそうな雰囲気がしてくる。パトに代わったシャーラウィ。いきなりゾーンの隙間でボールを受けてチャンスを作る→やっぱりあいつが外す。でも攻撃は続く、跳ね返りをシャーラウィがイブラへ→イブラの落とし→例のあいつがカラブリ。

 ■最後に、感想や思ったこと

 そうこうしているうちに試合終了。インテルが気合いで守り倒してミランの攻撃を完封した試合でした。右サイドに鉄壁の守備を敷いた上に、ミランの守備を切り裂いたサネッティには100点だね。まさにインテルは1−0の美学のような勝利。ミリートとパッツイーニが守備をしたのが全て。継続しようね。

 にしても不思議な試合でした。そう感じたのはミランが最も勝てそうな戦い方を選択しなかったこと。この試合のメンバーならカウンターが間違いなく強かったはずなのに、、って試合が終わってからずっとアッレグリに愚痴を言ってるのは秘密だ。慢心と過信から生まれたような戦術の選択ミスだと思う。もちろんボール持って崩す自信もあったと思うけどさ。客観的にみるとセリエは盛り上がってきたぞい。